発達障害者の雇用まとめ ~特性、雇用状況、採用・定着のポイント~

発達障害者の雇用まとめ

一定以上の企業には、法定されている人数以上の障害者雇用が求められます。しかし、雇用にあたっては障害の特性を理解することが欠かせません。
ここでは「発達障害」について説明し、発達障害者の採用に際して活用したい制度や、雇用定着に向けてのポイントなどを解説していきます。

発達障害について

まずは、発達障害の特性を整理していきます。
そもそもここで言う「発達」とは、人が社会の中で自立し、生活ができるようになるまでの全過程を指します。そして発達障害は、こうした発達の途上に生じた乱れを意味します。
発達の領域にも色々あり、例えば「認知」「学習能力」「言語能力」「社会性」「注意力」などが挙げられます。発達障害を医学的に診断した場合、こうした領域に応じる形でいくつかの分類がなされます。
例えば認知に関して、IQが70未満なら「精神遅滞」とされますし、学習能力の発達に関しては「学習障害」、言語能力に関しては「発達性言語障害」、社会性に関しては「汎用性発達障害(自閉症スペクトラム)」、注意力や行動コントロールに関しては「注意欠陥多動性障害」などと名付けられます。

発達障害の者を雇用する場合、これらの領域を分けて考えなければ問題が生じる恐れがあります。発達領域の違いがあるということは、当然、それぞれに特徴が異なるからです。
「学習障害」であれば知的な能力に遅れはないものの、読み書きや計算が苦手になりやすいです。しかしながら計算だけが苦手というケースもあり、同じ領域内であっても画一的に評価することは避けなくてはなりません。
「汎用性発達障害(自閉症スペクトラム)」の場合にはさらに、単に「自閉症」と呼ばれるものと「アスペルガー障害」に分けることができます。アスペルガーの場合は言語の遅れを伴わない自閉症であり、そうでない人との見分けがつきにくい例もあります。

発達障害者の雇用状況

厚生労働省からは、障害者雇用実態調査の結果が公表されています。2021年時点での最新版は平成30年度の調査結果で、同調査によると5人以上の従業員がいる事業所において雇用されている障害者数は82万1,000人とされています。そのうち最も多いのは身体障害者の42万3,000人、次いで多いのが精神障害者の20万人、そして知的障害者が18万9,000人で、発達障害者は3万9,000人と比較的少ない割合を占めています。なお、最も多い疾病は「広汎性発達障害」で76.0%とされています。
その他発達障害者に関する雇用の特徴として以下が挙げられます。
・正社員になっているのは22.7%
・事業主の配慮として最も多いのは「短時間勤務等勤務時間の配慮」で76.8%
・職業は、販売が最も多く39.1%
・平均賃金は12万7千円
・平均の勤続年数は3年4月
・企業側が感じる課題は「会社内に適当な仕事があるか」が最多で75.3%

発達障害者の採用にあたって活用したい制度

法律により障害者雇用の義務が課されていますが、これを支援する形で様々な制度が設けられています。
初めての雇用で不安のある方、採用を積極的に検討しているものの上手くいくか悩んでいる方、発達障害者への適切な配慮や対応が分からないという方は以下の内容を確認すると良いでしょう。

障害者短時間トライアルコース

「障害者短時間トライアルコース」は、一定期間の雇用を行うことで、その適性や業務遂行可能性を見極めることを目的としています。
ハローワークや職業紹介事業者からの紹介を受け、就職が困難とされている障害者を雇用するのですが、試行雇用ができることでミスマッチを防ぐことができるという利点があります。
通常、一度雇用してしまうと企業の都合で解雇するのは難しいです。しかし、この制度を活用することで3ヶ月間は様子見ができ、雇用される側としても早期就職の実現が図りやすくなるのです。

労働者が当該制度を理解し、企業は紹介によって雇い入れ、3ヶ月から12カ月のトライアル雇用を実施することで助成金を受け取ることもできます。受給額は支給対象者1人につき、最大4万円/月です。

ジョブコーチ支援事業

労働者の職場適応に課題がある場合、障害に詳しくない企業内部のものだけで対応するのは難しいかもしれません。そのような場合には「職場適応援助者支援事業」が役に立ちます。
職場適応援助者は「ジョブコーチ」とも呼ばれ、障害者と事業主双方にアドバイスをしてくれます。例えば、障害者に対しては他の従業員との関わり方や効率的な作業の進め方などを、事業主に対しては障害者が力を発揮しやすい環境の提案や障害特性を踏まえた仕事の教え方などを指南してくれます。

ジョブコーチの活用には3つの形態があります。
1つは「配置型」。地域障害者職業センターに所属しているジョブコーチが事業所に出向くというタイプです。
次に「訪問型」。これは就労支援をしている社会福祉法人等に所属しているジョブコーチが事業所に出向くというタイプです。
3つ目が「企業在籍型」。これは外部のジョブコーチが常勤してくれるのではなく、自社の授業員がジョブコーチ養成研修を受けることでその後の継続的支援を実現するタイプをいいます。

訪問するタイプの場合には、1~8ヶ月の期間をかけて支援をしていくことになります。なお標準は2~4ヶ月です。
支援の初期段階では週3日から4日ほど事業所を訪問し、集中支援を実施します。この期間で職場適応上の課題を分析し、改善を図ります。次に移行支援のフェーズへと進み、ノウハウの伝授やキーパーソンの育成に取りかかります。支援主体を職場に移行するのが目的です。その後はフォローアップとして数週間から数ヶ月に一度訪問するだけで足りる状況を目指します。

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」は、「特定求職者雇用開発助成金」を受け取るために活用できるコースです。
ハローワーク等の紹介によって、発達障害者等を継続雇用する事業主に助成が行われます。企業側は雇用後、配慮事項等に関して報告をしなければならず、雇用から6ヶ月後にはハローワーク職員による職場訪問も予定されています。
他にも、前提として企業側がお様保険適用事業所であることが求められます。
なお、支給額は同制度における「中小企業」に該当するかどうかによって変わってきますので、区分の基準を知っておかなければなりません。職種によって異なり、小売業であれば資本金額が5,000万円以下であるか常時雇用50人以下でなければなりません。サービス業の場合には資本金額は同じく5,000万円以下ですが、常時雇用が100人以下であれば中小企業に該当します。

仮に中小企業に該当し、短時間労働者以外の者を雇用して受給条件を満たした場合、最大120万円(1人あたり)を受け取ることができます。助成対象期間は2年間で、4期に分けて30万円ずつ支給されることになっています。中小企業でない場合には支給額は50万円で、助成対象期間は1年間です。

精神・発達障害者しごとサポーター

「精神・発達障害者しごとサポーター」は、上記制度とは毛色の異なるものです。助成金を受けたり援助者に来てもらったりするのではなく、より企業側が主体となって取り組む場合に役立つ制度です。
同制度では、精神障害や発達障害について正しい知識を身に付け、障害者を温かく見守って支援する応援者を育成するための講座を開いています。ここでの応援者を「精神・発達障害者しごとサポーター」と呼んでいます。
厚生労働省がサポーター養成講座を全国で開催しており、講座の受講で意思表示グッズを受け取ることができます。シンボルマークが見える状態にすることで、自分は発達障害等に理解があるのだと示すことができます。
講座は2時間程度で、気軽に受講しやすいです。

発達障害者の定着に向けたポイント

企業にとっては雇用後の定着も重要です。定着しなければ採用フローに無駄な労力とコストを割いてしまうことになりますし、労働者側にも負担がかかります。
そこで以下のポイントを押さえておきましょう。

労働者個別の特性を理解する

大前提となるのが、発達障害者の者個別の特性を理解するということです。発達障害についての一般論に詳しくなったところで、その個人に着目しなければ適切な対応や配属はできません。
そこで、発達障害に関する基礎知識を身に付けた上で、特にその者がどのような特徴を持っているのか、どのようなことに強みがあって、逆に何に弱みがあるのか、ヒアリングなどを通して理解することに努めましょう。ここをおろそかにしていると労働者のみならず、周囲の者の不満がたまる可能性がありますし、生産性の向上も期待できません。

障害の公表に対する配慮

発達障害者個人をよく理解し、適切な配慮をしたとしても、職場にいる他の従業員との関係も良好でなければなりません。
そこで、管理者のみならず、同僚にも理解を得てもらうことが大切です。障害の存在を知らずにいると「なぜそんなことを言うんだ」「なぜこんなことができないんだ」と、人間関係の悪化を招く可能性があります。
ただ、その本人の気持ちや、個人情報の取扱いという観点からも、勝手に障害のことを公表するのは避けなくてはなりません。非常にデリケートな問題ですし、本人の承諾なく公表することのないようにしましょう。しっかり話し合い、本人が、公表後も不利な扱いにはならないとの安心感が得られるように努めましょう。

専門機関や家族との連携

他にも重要なこととして「無理に問題を社内で完結させようとしないこと」が挙げられます。
プライバシーへの配慮は当然ですが、必要に応じて専門家の力を借りたり、上記ジョブコーチの制度を利用したり、外部との連携も行うという選択肢を視野に入れましょう。
専門的な知見を有する者のサポートを得ることで、これまで見えてこなかった解決策が見出せることは十分に期待できます。
場合によっては医療機関との連携を図ることもあるでしょうし、様々な領域の専門家とネットワークを組むことができれば継続的安定的な障害者雇用が実現できます。
また、家族との連携も可能なら検討すると良いです。関係機関への依頼においても、橋渡しとして家族が間に入ることで円滑に調整しやすくなります。

参考URL

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000146348.html
http://www.koyoerc.or.jp/investigation_research/245.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05390.html
http://www.koyoerc.or.jp/assets/files/245/chapter1.pdf
http://www.koyoerc.or.jp/assets/files/245/chapter4.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/000562055.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/hattatsu_nanchi.html

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