就労移行支援事業と就労継続支援事業の違いとは?企業が注目すべきポイントも解説

就労移行支援事業と就労継続支援事業の違いとは?企業が注目すべきポイントも解説

障害者向けに「就労移行支援事業」および「就労継続支援事業」というものが用意されています。どちらも名称が似ており、パッと見ただけではどちらがどのような事業なのか判断が難しいです。そこでここでは、これらの概要を解説し、両者の違いを明らかにしていきます。また、事業者の方に向けた情報も紹介します。

就労移行支援事業・就労継続支援事業は障害福祉サービスのこと

障害者雇用に関しては、法律で一定割合以上の雇用が義務付けられるなど、その他多方面からの支援がなされています。
そして、こうした障害福祉サービスの一部として「就労移行支援事業」「就労継続支援事業」というものが設けられているのです。
一般の方に対しても雇用を促進するような取り組みがいろいろと実施されていますが、特に障害者の方に関しては手厚くする必要性が高く、一般的な就職支援とは異なる毛色のサービスが提供されています。

障害者就労の現状

簡単に障害者就労の現状を把握しておきましょう。
厚生労働省が公表している資料によると、障害者総数は全国で約950万人、そして18~64歳の労働力となり得る年齢での在宅者数は400万人近くもいるとされています。

障害を持つ方の一般就労への流れとしては、特別支援学校からの就職が約32%、就労系障害福祉サービスの利用は約31%であると示されています。
推移を見てみると、就労系障害福祉サービスを使っての一般企業への就職が年々増加していることが明らかになっています。平成15年では、これらサービスから一般就労へ移行した人数は1,288人であったのに対し、令和元年では17倍にも上る2万人強に達しています。障害福祉サービスとはもちろん上でも紹介したように「就労移行支援事業」や「就労継続支援事業」などが含まれています。つまり、障害者雇用に関する問題はまだまだ残されてはいるものの、これらのサービスが一定の貢献を果たしていることは確かなのです。

就労移行支援事業とは

それでは、まず「就労移行支援事業」について詳しく解説していきます。

就労移行支援事業のサービス内容

就労移行支援事業では、一般就労への移行を目指す方に向けて、事業所内・企業における作業や実習を行うとともに、適性に合う職場探しを支援します。
また、就職までのみならず、その後の職場定着にも意識を向けた支援も行っています。

基本的に通所によるサービスを提供するとし、個別支援計画の進捗に応じて職場訪問なども実施されます。利用期間は標準期間として24ヶ月が設定されています。
なお、この標準期間は最大1年間の更新が可能とされていますが、その更新をするためには市町村審査会の個別審査を経なければなりません。同審査会にて必要性が認められた場合に限り更新されます。

就労移行支援事業が利用できる者

当然ながら、誰もが同事業を利用できるわけではありません。
大前提として「一般就労」を希望している者でなければなりません。一般就労とは障害者であるかどうかを問わない、一般企業の下で他の者と同じような雇用形態に準ずる働き方をいいます。これに対しては「福祉的就労」というものがあります。こちらは福祉サービスを受けつつ働く就労方法のことです。福祉的就労を目指す場合には同事業を利用できません。

また、知識や能力の向上が見込まれること、実習や職場探し活動を通じて適性に合う職場への就労が見込まれる障害者でなくてはなりません。つまり、これらの見込みがすでにないと判断されるような場合には一般就労は現実的ではなく、福祉的就労のほうを検討することになるでしょう。
一方で、これらの見込みがあれば、在宅で起業を希望する者でも同事業を利用できます。必ずしも就職でなければならないわけではありませんし、在宅での勤務を希望する人も事業の対象者になれます。

ただ、原則65歳未満でなくてはならず、65歳以上で利用できるのはかなり限定的です。
具体的には、65歳に達する前5年間に障害福祉サービスの支給決定を受けており、65歳に達する前日時点で就労移行支援の支給決定を受けていたのであれば、引き続き同サービスの利用が可能とされています。

就労移行支援事業の流れと具体的活動

同事業は、養護学校卒業生や離職者、在宅者などが一般就労を目指す上での第一歩を助ける内容となっています。

そこで最初に、地域障害者職業センターにて職業評価を行います。この時期は「通所前期」です。具体的活動としては、就職というよりも、より基礎的な能力を高めることに注力されます。例えば基礎体力の向上や集中力、持続力の向上、併せて適性や課題の把握といったことも行われます。そのため通所前期は「基礎訓練期」といわれたりもします。

続いて「通所中期」に入ります。ここからは職業習慣の確立や働くうえで必要なマナーなどを身に付ける活動を始めます。挨拶であったり身なりであったり、スムーズに就労ができるよう必要最低限の能力を身に付けます。また、施設外授産や職場見学、実習なども行います。そのためこの時期は「実践的訓練期」ともいわれます。

最後に「通所後期」に入ります。職業習慣やマナーなどの習得に向けた活動は継続されますが、この時期の特色としては求職活動が始まるということが挙げられます。職場開拓、トライアル雇用などが行われるため「マッチング期」ともいわれます。ハローワークと連携し、職業の紹介を受けたり、求職活動の支援を受けたりします。さらにハローワークは企業との関係でトライアル雇用事業や障害者委託訓練、職場適応訓練などの事業を遂行します。そしてこれらに対応する企業は、障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金や特定求職者雇用開発助成金などを受けられます。

こうして就職が成功したあとは、「訪問期」に進みます。「フォロー期」とも呼ばれ、就職後6ヶ月の継続支援が行われます。地域障害者職業センターによるジョブコーチ支援などが実施されるのです。

就労継続支援事業とは

次に「就労継続支援事業」について見ていきましょう。

就労継続支援事業のサービス内容

就労継続支援事業には2パターンあります。
1つは「A型」です。「雇用型」とも呼ばれるタイプで、雇用契約に基づいて就労機会を提供。その中で一般就労に必要なスキルを磨くなど、一般就労への移行に向けた支援が行われます。
利用期間の制限などはありません。

もう1つは「B型」です。「非雇用型」とも呼ばれるタイプで、雇用契約を締結することなく就労や生産活動の機会を提供。一般就労に必要なスキルを磨き、一般就労に向けた移行を支援します。
こちらも同じく利用期間の制限はありません。

就労継続支援事業が利用できる者

同事業のうちA型(雇用型)を利用できるのは、「通常の事業所での雇用は困難であるが、支援を受けることで雇用契約に基づく就労ができる障害者」です。原則65歳未満に限られること、例外規定に関しても就労移行支援事業と同じです。

他方、B型(非雇用型)では利用者の制限が緩やかです。「就労移行支援事業などを利用したものの雇用に結びつかなかった者」や「一定年齢に達しているものの、生産活動に必要な知識・能力の向上や維持が期待できる障害者」が対象です。

就労移行支援事業と就労継続支援事業の違いを比較

両事業の違いを下表で整理しておきましょう。

就労移行支援事業と就労継続支援事業の違いを比較

就労移行・就労継続を支援する方法とメリット

所定の要件を満たすことで、事業者は就労移行支援事業や就労継続支援事業の事業所となることができます。

就労支援の事業所となるメリット

事業所としての指定を受けこれら事業を実行することは、企業側に一定の負担がかかります。
しかし、これらの事業を行うことで得られるメリットもあります。最もわかりやすいものは助成金の支給でしょう。例えばハローワークの紹介により障害者を雇用する事業主に助成される「特定求職者雇用開発助成金」や、障害者を試行的に雇い入れた場合に助成される「トライアル雇用助成金」、職場定着に向けた取り組みに対して支給される「キャリアアップ助成金」などがあります。さらにこれらの枠組みの中には細かくコースが分けられ、事業者の状況に適した助成金を受けることが可能となります。

また、助成金のほかにも、社会的な貢献をすることによる対外的な評価向上もメリットとして考えられます。ルールを守って運用できていれば、クリーンで健全な企業であることをアピールできますし、この取り組みを通して優秀な人材を見つけることもできるかもしれません。

指定事業所となる方法

詳細な手続きや要件に関しては各自治体で公表されている内容を確認する必要がありますが、共通している事項もあります。
要件を大別すると「法人格があること」「事業所の物件や間取りが法に準拠していること」「人員配置基準を満たしていること」の3つが挙げられます。

例えば職業指導員や生活支援員がそれぞれ1人以上必要ですし、設備基準に関しては訓練・作業室の広さ、談話の漏洩を防ぐ措置の講じられた相談室の設置、利用者の特性に応じた洗面所や便所の設置などが求められます。

就労支援の事業所となる場合の注意

適切に事業所としての運営ができればメリットの享受ができますが、適法な状態を維持しなければなりませんし、経営状態も良好に維持できるよう努めなければなりません。
実際、厚生労働省の出したデータによると、就労継続支援A型における事業所のうち、半数以上が指定基準を満たせていないことがわかっています。ここでの基準とは、利用者に支払う賃金額に関することです。
平均賃金は上昇傾向にあるとされていますが、その一方で指定基準を満たさない賃金になってしまっている事業所もあるため、生産活動に問題が生じないよう、経営状態の維持には努めなければなりません。

参考URL

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000571840.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000674639.pdf

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