IT業界における障害者雇用の状況や課題を解説!必要になるスキルなども紹介

日本には「障害者雇用促進法」という、障害者の職業安定を図る目的で作られた法律があります。そこでは一定の範囲内で事業主に対する雇用の義務が課せられていたり、差別の禁止が義務付けられていたりなど、障害者の方が就職しやすい環境となるように制度が設けられています。
近年はIT業界への注目度が高まり、この業界を目指す方も増えていることでしょう。そこで本記事では、IT業界における障害者雇用の状況等を解説し、現状の把握とこれからの対策に役立つ情報を紹介していきます。

IT業界全体の状況

まずはIT業界全体が現在どのような状況にあるのか紹介します。制度として障害者雇用が後押しされているものの、実際の雇用数などは業界の動向によっても当然変わってきます。そのため、まずは全体像を捉えるようにしましょう。近況、および業界内の主な職種に関しても触れていきます。

近年の雇用状況

インターネットは普及し、スマホ等の通信デバイスの保有割合も増加しています。そのため誰もが一般にWebサービスを利用し、クラウドへアクセスし、その他様々なITによる恩恵を享受しています。
特に近年はAI、IoTなどの分野が注目を浴びており、これらの言葉が出てきた当初は未来の技術としての紹介でしたが、現在では実用化も進んでいます。ディープラーニングによる高度に自立した解析が可能になったり、ビッグデータが扱えるようになったりなど、それぞれの技術レベルが向上していることがその背景にあります。
このようにIT業界は成長し、そしてこれからも伸びていくとみられています。AIやIoTもまだまだ社会に浸透する余地がありますし、ようやく実用化が進み始めた段階です。そのため普及が進むに伴い、市場にはより多くの人材が必要になるとされています。
他方で少子高齢の進行が社会的問題になっていますし、IT業界の人材不足も深刻化しています。
しかもこの傾向は長期的に続くといわれています。少子高齢化を食い止めることは現状できていませんし、日本全体で人口の減少も進むといわれているからです。経済産業省が公表したデータ(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf)でも、すでに数十万人規模での不足が生じているとされています。そして試算では、2030年に最大約79万人に不足数が拡大するという結果が出ています。少し状況が改善されたとしても、少なくとも41万人の不足は生じると考えられ、いずれにしろ人材不足は避けられないといえます。

IT業界の仕事の種類

IT業界といっても様々な仕事があります。全員がプログラムを組むわけではありませんし、必ずしも他の業界と異なる業務内容しかないということではありません。当然、ITニーズが増えて一般向けのサービスが増えれば、顧客対応を行う人材も必要ですし、営業職やマネジメントに関する職を担う人材も需要が増加します。
ただ、やはりIT業界における職種の特色といえば、エンジニア職でしょう。「システムエンジニア」や「プログラマー」「組込みシステムエンジニア」「Webデザイナー」「インフラエンジニア」など様々です。
プログラマーは、システムエンジニアが作成した指示内容に従い、プログラミング言語を駆使して実際にコーディングを行う人を指します。コーディングの内容も多種多様で、ソフトウェアを開発するのか、Webサービスを開発するのかによっても具体的仕事内容は変わってきます。特にハードウェアにシステムを組み込む場合には組込みシステムエンジニアと呼ばれたりもします。名称はいろいろとありますが、厳密にすべてを区分けできるとも限らず、それだけ多様な仕事内容が存在しているのです。
エンジニア職以外だと、ITコンサルタントやセールスエンジニアといった営業等の職、プロジェクトマネージャー・プロジェクトリーダー等のマネジメント職、その他データアナリストやWebマーケターなどITに特化したマーケティング職もあります。
エンジニアのイメージが強いIT業界ですが、非常に幅広い種類の仕事があるのです。

IT業界における障害者雇用の状況

IT業界全体における雇用状況は上述の通りですが、次に障害者雇用に着目してみましょう。
厚生労働省が「令和元年 障害者雇用状況の集計結果」を公表し、近年における雇用数や実雇用割合の実態を調査・集計し、その結果と法定雇用率との比較などを行っています(https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000580481.pdf)
なお前提として障害者雇用促進法について簡単に触れておきます。同法では、事業主に対し障害者の常時雇用について、一定割合以上になるよう義務付けています。一定規模以上の企業であるなど、条件を満たす場合には法定雇用率である2.2%(民間企業のケース)を超えるようにしなければなりません。
集計結果ですが、全体として良い方向へ進んでいることが分かっています。雇用数は56万人を超え、前年と比較して2万5000人ほども増えています。実雇用率も2.11%と、前年比で0.06ポイントの上昇が見られます。法定の割合を達成する企業は、全体の48%と半数未満ではあるものの、推移を見ると少しずつ確実に増加していることが分かるため、今後はより障害者が働きやすい環境へと変わっていくことが予想されています。
IT・情報通信業界ではどうでしょうか。現在の状況を、民間企業全体と比較していきましょう。
雇用している障害者の数は約2万7000人。そして実雇用率が1.74%という結果になっています。企業達成割合は26.9%と、これは他の業界と比べても最も低い値です。
そのためIT業界では、人材の需要が増しているにもかかわらず、障害者雇用があまり進んでいないことが見えてきます。ただ、良い傾向にあることは理解しておくべきでしょう。雇用数・雇用割合いずれも増加を続けているのです。人材不足という大きな問題も抱えているため、今後大幅な改善が図られる可能性もあるでしょう。

IT業界における障害者雇用の課題

IT業界の障害者雇用が遅れていますが、それにはいくつかの原因があります。
1つは、「客先で常駐して働く」という形態を取ることがIT業界では多いためです。本社のみで勤務するのであれば環境構築などもしやすいですが、客先で仕事を行い、定期的に場所の入り替わりなどが発生する勤務形態では雇用が難しくなってしまうのです。
ただ、当然ながらすべての障害者が客先での常駐勤務に向いていないわけではありません。システム開発や保守事業を行うあるIT企業においては、専門知識よりもコミュニケーション能力と事務スキルが客先にて必要だとして、これらのスキルを備える方を障害者雇用しています。この方はIT企業での就業経験はなかったものの、企業側がしっかりと能力を見極めてくれたことによって就業が実現したのです。

他の課題としては、専門的技術を要する仕事であるとともに、障害者には対応が難しいと考えてしまっていることが挙げられます。企業側が改めて障害者雇用について考え、本質的な採用基準を設けることが求められるでしょう。
また、ハード面の課題、設備等の問題もあります。例えば身体障害者に対応したトイレやエレベーター、専用の駐車場を設置するなど、場合によっては工事が必要になるかもしれません。積極的に雇用に取り組みたいと考えつつも設備が整っておらず、障害者雇用に踏み切れていないという企業もいます。

IT業界で障害者が働くために必要なスキル

最後に、IT業界で働くために身に付けておきたい、必要なスキルについて解説していきます。IT業界全体が人材不足で悩んでいること、障害者雇用が増加傾向にあることからも、しっかりとスキルを身に付けておくことで採用に近づくことができるでしょう。

プログラミングスキル

IT業界における就職活動では、成果物を見せることで自身のスキルを示しやすいです。そして実際にプログラムを組んで成果物を示すということは、その人のスキルの見極めに活用しやすく、企業側としても評価がしやすくなります。
他方、これまでにどのようなことを学んできたのか、どのような経験を経ているのか、といったことは採用における重要な判断材料ではあるものの、採用担当による評価にばらつきがでやすいです。
もちろん、プログラミング能力だけがアピールになるわけではありませんし、職種によっては必要ないこともあります。しかしプログラミングスクールも増えていますし、このスキルを身に付ける環境が整いつつあるため、エンジニアとしてIT業界を目指すのであればプログラミングを学ぶことも検討すると良いでしょう。

業界の基礎知識とコミュニケーション能力

専門的なスキルを身に付けていることで採用されやすくなることは間違いありません。前項で説明したように、採用の場では自分で制作したものを提示し、自己のスキルをアピールするといったこともよく行われます。
しかしIT業界にも様々な仕事があります。個人レベルで成果物を作るのが困難な領域や、実務の中で技術を身に付けていくというものも珍しくありません。これに対し該当する分野の基礎知識は事前に学習して身に付けることが可能ですし、コミュニケーション能力は多くの現場において求められるスキルです。これらを持っておけば働きながらスキルを身に付けていくことができるだろうと、ポテンシャルを評価してくれる可能性があります。

事務処理能力

上述の通り、専門職のみでIT業界が構成されているわけではありません。組織として活動をする上では当然経営に携わる者がいたり、マーケティングを行う者がいたり、その他営業や経理、事務職を担う従業員も多数在籍します。
そして規模の小さな会社であれば、技術者がマーケティングを行うこともありますし、営業も業務として行う可能性もあります。その他雑多な事務処理を求められることも珍しくありません。そのため、専門的技術が備わっていても、それだけでは採用してもらえないことがあるのです。基本的な事務作業がこなせることも、場合によっては重要視されると理解しておきましょう。
IT業界に就職するためには必ずしも高い専門性を有している必要はありませんので、自分の長所を活かして、身に付けられるものから取り組んでいくと良いです。今後は雇用状況も変わってくることが予想されていますので、少しずつでもスキルを磨いていけば、チャンスもやってくるでしょう。

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