精神障害者の雇用状況・職種・仕事内容・雇用する上での課題について解説

近年、障害者雇用促進法の改正なども受け、障害者の雇用率は増加傾向にあり、注目が集まっています。しかし、障害者を雇用するにあたって課題を抱えている企業も少なくありません。ここでは、障害者の中でも精神障害者の雇用に焦点を当て、職種や仕事内容、労働時間、賃金などの現状や雇用する上で課題となる点、配慮が必要な点について解説します。

精神障害者の定義

障害者基本法によると、精神障害者とは「精神障害(発達障害を含む)がある者で、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にある者」と定義されます。一方で精神保健福祉法では、「統合失調症、精神作用物質による急性中毒またはその依存症、知的障害、精神病質、その他の精神疾患を有する者」と定義されています。このように、精神障害者の定義は法律によって様々で、国際的にも国内においても統一されていません。障害者基本法では福祉的な視点で捉えているのに対して、精神保健福祉法では医学的な視点で捉えており、福祉的側面及び医学的側面の双方で考えられることが多いといえます。

精神障害者の雇用状況

精神障害者をはじめとした障害者雇用の現状について、「障害者雇用実態調査」の調査結果を基に解説します。これは厚生労働省が5年に一度行う調査で、障害者雇用における実態を把握し、今後の施策検討に役立てることを目的として行われています。本調査では、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者の4つの障害の種類に分けて調査を行っています。また本調査上での精神障害者とは、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者(発達障害のみにより交付を受けている者を除く)及び産業医・主治医等から統合失調症、そううつ病またはてんかんの診断を受けている者と定義されています。
以下では、雇用状況を雇用形態、職種、仕事内容、労働時間、賃金、勤続年数の6つに分けてそれぞれ見ていきます。

雇用者数

本調査の事業所6,181社において雇用される精神障害者の数は3,518人で、この結果から推計20万人の精神障害者が雇用されていることが予測されます。性別では男性55.0%、女性44.3%というように、男女に大きな差はありません。年齢別では、最も多いのは45~49歳で全体の18.0%、続いて35~39歳が15.5%、50~54歳が13.4%という結果になっています。疾病別では、統合失調症31.2%、躁うつ病25.8%、てんかん4.7%という順に多く、雇用される精神障害者の約半数が統合失調症及び躁うつ病であることがわかります。

雇用形態

雇用形態を、契約期間の定めの有無及び正社員かそれ以外に区分すると、無期契約の正社員25.0%、有期契約の正社員0.5%、無期契約の正社員以外46.2%、有期契約の正社員以外28.2%という結果が得られています。最も多いのが無期契約の正社員以外であり、約半数がこれに当たります。また、派遣労働者やパートタイマー、臨時・日雇い、契約社員、登録社員、嘱託、出向などの正社員以外が全体の約75%で、正社員は25%と少ない割合であることもわかります。
正社員の割合について他の障害種別も見てみると、身体障害者52.5%、知的障害者19.8%、発達障害者22.7%というように、身体障害者のみが半数以上なのに対して知的・発達・精神障害を抱える場合は正社員の割合が低くなっているのが現状です。

職種

精神障害者が勤務する職種で最も多のいのは、卸売業・小売業53.9%、次いで医療・福祉業17.6%、サービス業9.4%です。
半数以上にもなる卸売業・小売業については、商品卸売業・小売業、繊維衣服等卸売業・小売業、飲食料品卸売業・小売業、建築材料鉱物金属材料等卸売業・小売業、機械器具卸売業・小売業、などがこれに当ります。

仕事内容

仕事内容としては、サービスの職業30.6%、事務的職業25.0%、販売の職業19.2%の順に多いとわかっています。その他では、生産工程の職業、運搬・清掃・包装等の職業、専門的・技術的職業なども多くの割合ではないものの一定数確認できます。

労働時間

労働時間に関しては、週30時間以上が47.2%、週20時間以上30時間未満が39.7%、週20時間未満13.0%となっています。週所定労働時間別の月間総実労働時間の平均は、30時間以上の場合は138.6時間、20時間以上30時間未満の場合は82.9時間、20時間未満の場合は32.5時間です。
他の障害種別では、週30時間以上の割合が身体障害者79.8%、知的障害者65.5%、発達障害者59.8%、週20時間未満の割合が身体障害者3.4%、知的障害者3.0%、発達障害者5.1%と、精神障害者の労働時間が他の障害種別と比べて短いという現状がわかります。これらは、精神障害者は定期的な通院が必要であったり、長時間勤務に不安を覚えたりすることが要因と考えられます。

賃金

精神障害者の1ヶ月の平均賃金は125,000円で、労働時間別に見てみると、30時間以上の場合は189,000円、20時間以上30時間未満の場合は74,000円、20時間未満の場合は51,000円というデータとなっています。
他の障害種別の平均賃金は、身体障害者215,000円、知的障害者117,000円、発達障害者127,000円と、身体障害者のみ20万円を超えるものの、知的・発達障害者とは同じ水準の賃金といえます。
また、身体障害者の場合は、週30時間以上の場合の平均賃金が248,000円であるのに対して、精神障害者の場合は189,000円というデータから、同等の労働時間であっても障害の種別によって賃金に大きく差が出ていることがわかります。

勤続年数

精神障害者の平均勤続年数は、3年2ヶ月です。身体障害者の平均勤続年数は10年2ヶ月、知的障害者は7年5ヶ月という結果と比べると、精神障害者の勤続年数は短く、職場に定着しにくいという特徴がわかります。継続的に働ける環境を作り、早期離職を防止することが今後の課題であると考えられます。

精神障害者を雇用する上での課題や配慮

障害者雇用促進法により、一定の事業主には法定雇用率以上の割合で障害者を雇用することが義務付けられています。これは、障害者が地域の一員として共に暮らし共に働くことを目的としています。以前は障害者雇用義務の対象は身体障害者及び知的障害者のみでしたが、平成30年4月より、精神障害者も対象として新たに加わりました。またそれと同時に法定雇用率も改正、さらに令和3年3月にさらに改正され、民間企業は2.3%、国・地方公共団体は2.6%、都道府県等教育委員会は2.5%の割合で障害者雇用の義務があります。
では、障害者を雇用するにあたって、どのようなことが課題となるのでしょうか。最後に、精神障害者を雇用する上での課題点や配慮について紹介します。これらを踏まえた上で、精神障害者も含めた従業員が働きやすい職場づくりに努めましょう。

業務量や業務進捗を定期的に確認する

精神障害を抱える人の中には、たくさんの情報を一度に聞くと混乱してしまうという方も少なくありません。そのため「一度に複数の業務指示を出さないようする」「一つずつゆっくりと丁寧に伝える」「複数の業務指示を出す時は口頭で伝えると同時にメモ書きしたものを渡す」などの配慮をすることが大切です。また、業務の進捗状況を定期的に確認し、業務量は適切かどうかきちんと判断することも大切です。一緒に働く従業員は、業務の指示を出して終了ではなく、業務は滞らずに進んでいるか、業務量は多くないかまたは少なくないかを常に気にかけるよう意識しましょう。

変わった様子がないか気にかける

何か問題が発生した時や困っていることがある時でも、自分から相談するのが難しい場合もあります。そのため、何か困っていないか、体調不良を起こしていないか、周囲の従業員は注意して観察しましょう。いつもと様子が異なる時には声かけすると良いでしょう。また、定期的な面談や業務日報を活用し、業務に関してはもちろん、体調や人間関係などの悩みを聞き取る機会を設けましょう。ヒアリングした内容は状況に応じて他の従業員とも共有し、解決できるものについては対策を練り、より働きやすい環境になるよう努めるべきです。

休暇の取りやすい制度に調整する

精神障害者の多くは定期的な通院が必要であったり、急な体調不良が起こったりもします。そのようなとき、休みたいのにも関わらず休めない状況になってしまっていると、症状が悪化することもあり得ます。離職の要因にもなるでしょう。そこで、休暇の取りやすい制度を設ける必要があります。体調の優れない時に休みやすい制度を作ることで、早期離職の防止に繋がるでしょう。
しかしこれらの制度を設ける際には、他の従業員から不満の声が上がらないよう、不平等にならない制度を置くようにしなければなりません。

従業員が精神障害者の特性を理解する

精神障害者といっても病気の種類や程度は様々です。そのため一緒に働く従業員や上司にあたる人、人事担当は、それぞれの病気の特性について正しい知識を学ぶことが大切です。
例えば、統合失調症だと幻覚や妄想が主な症状で、日常的に薬の服用が必要なこと、ストレスや環境の変化に強くないことを理解し、環境変化の激しい職場や業務内容は避けるべきです。また、うつ病や躁うつ病などの気分障害は、うつ状態の時には気持ちが落ち込みやる気がでない、疲れやすいというのが主な症状で、躁状態の時には反対に気分が過剰に高揚するという症状が出ます。うつ状態の時は無理をして働かず休養が必要なことを理解し、休養するよう指示を出し、躁状態の時にはお金の管理や安全性への配慮が特に重要となります。また、自傷行為などが疑われる行為や言動があった場合には、上司や人事担当、家族に報告するなどの配慮も欠かせません。その他の病気では、突然発作が起こるてんかんがあります。発作には、けいれんや意識を失うなど様々なタイプがあります。発作の起こっていない時は、普通の日常生活が送れることがほとんどのため、過剰に活動を制限しないようにすること、発作が起きた時には誰がどのように対応するのかを決めておくことなどが従業員にできる配慮といえます。

このように、抱える精神障害の種類や程度をしっかりと理解するためにも、研修会や勉強会を開くなどして、従業員に障害の特性を学習する機会を用意してあげると良いでしょう。

【参照URL】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05390.html
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000521376.pdf
https://www.ref.jeed.go.jp/18/18858.html

関連記事