視覚障害者の雇用状況、職種、仕事内容について

視覚障害者の雇用状況、職種、仕事内容について 身体障害者雇用は以前よりもずっと多くなっています。1976年に雇用率制度が制定され、身体障害者については法定雇用率算定基準の対象となったため、他の障害と比較して雇用がぐっと進みました。しかし、各民間企業が障害について深く理解しているかというと、理解が進んでいないところもあり、雇用を考えていても受け入れを躊躇してしまうこともあるようです。特に視覚障害者の雇用については雇用受け入れが進みにくい現実があります。

視覚障害者とは

視覚障害とは、視覚に障害があり、その障害によって日常生活や就労に何らかの支障がある状態をさします。視覚の障害は視力、視野に障害があることを指しますが、視覚障害にもいくつかの等級があり障害によって就業への影響も変わってくるため、雇用の受け入れが進まないことも多くなるのです。
視力の障害については、拡大鏡などを利用すれば文字情報を読むことができる弱視や、モノの形が何となくわかる状態の強度弱視、明暗がわかる程度は盲など定義があります。これとは別に視野の障害も様々です。視覚障害者の雇用を増やしていくためにも、まずは視覚障害者の等級を理解することが重要です。

視覚障害者の等級

身体障害者の等級の中で視覚障害者の等級は1級から6級に区分されています。
障害の程度が細かく分かれていますが、視力障害を抜粋すると以下のようになります。
1級 視力の良い方の眼の視力が0.01以下のもの
2級 視力の良い方の眼の視力が0.02以上0.03以下のもの 視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁いかのもの
3級 視力の良い方の眼の視力が0.04以上0.07以下のもの(2級の2に該当するものを除く。) 視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
4級 視力の良い方の眼の視力が0.08以上0.1以下のもの(3級の2に該当するものを除く。)
5級 視力の良い方の眼の視力が0.2かつ多能の眼の視力が0.02以下のもの
6級 視力の良い方の眼の視力が0.3以上0.6以下かつ他方の眼の視力が0.02以下のもの
※手動弁とは・・・・検査する人の手を眼前で上下左右に動かし、動きの方向を見分けられる視力のこと

この障害の程度に加えて、等級を決める際には判定基準なども加わるため、視力障害を持っている方それぞれで、同じ等級でも障害に違いがあることを理解しておかなくてはなりません。
このほかに見え方について、全盲、弱視、ロービジョンといった表現もあり、視覚障害者の雇用を考える際、こうした「見え方」の表現についても理解しておく必要があります。
弱視 矯正視力が0.04以上0.3未満で拡大鏡を使い文字情報を読める状態
強度弱視 矯正視力が0.02以上0.04未満でぼんやりと物の形がわかる状態
矯正視力が0.02未満で全く見えず明暗がわかる程度の状態
※弱視・矯正弱視は普通の文字を使いますが、盲は点字を主に利用します。

全盲

医学的にいうと全盲は「光も感じない」状態です。しかし社会的盲、教育的盲という表現もあり、雇用を考えるときには、社会的盲や教育的盲などの言葉の理解も重要でしょう。
社会的盲 ある程度の視機能があるがかなり見えない状態で視覚以外の感覚を利用し日常生活を送っている状態
教育的盲 ある程度の視機能があるがかなり見えない貯め視覚以外の感覚による教育をすべき状態
盲や弱視以外に、ロービジョンという表現がありますが、ロービジョンは視覚障害者の多くを占める言葉となりますので、理解を深めることが必要です。

ロービジョン

弱視には医学的にいうと眼球に障害となる原因疾患がない視力低下の原因が、視覚に関係する「脳」の発達によると考えられる状態です。医学的な弱視には斜視弱視、屈折異常弱視、不同視弱視、形態覚遮断弱視という分類があります。何れも脳の発達によるものと考えられている弱視です。
医学的弱視のほかに、社会的弱視、教育的弱視があり、これをロービジョンということが多くなっています。
社会的弱視 視覚障害はあるが主に眼からの情報を使い生活できる状態
教育的弱視 視覚障害はあるが主に視覚を用いた学習が可能な状態
ロービジョンはこのように社会的弱視、教育的弱視に分けられていますが、見え方については障害をお持ちの方それぞれで違いがあります。眼の疾患によって視力が下がって見えにくくなっている方もいますし、視野が狭くなる方もいます。また光がまぶしいところだと見にくい、薄暗いところに行くと見えにくくなる夜盲症状があるなど様々です。

しかしこうしたロービジョンの方も拡大鏡を用いることで文字が読めます。 また、視野の中心が見えなくなっても、その周囲の視野情報で難なく道を歩く人を判断するなど、視覚障害を持っていても社会生活を潤滑に営んでいる方もいます。
全盲とロービジョンについて、現段階では明確な定義が確定していません。しかし全盲は視野機能をほぼ使えない状態であり、ロービジョンは資格情報をある程度使える状態と考えていいでしょう。

参考サイト
http://www.rehab.go.jp/Riryo/hk_tebiki/hk_tebiki_info7_1.htm

視覚障害者の雇用形態

視覚障害者の雇用形態も、健常者と同じように無期契約、有期契約、臨時や日雇い、契約社員と種類があります。これから視覚障害者の方々の雇用を考えるとき、どのような雇用形態がお互いにいい関係を築けるのか、しっかり考えていきましょう。

無期契約

無期契約とはいわゆる正社員のことです。ここまでと期限が決められていないため安定した雇用といえます。最近は障害者雇用以外でも、無期契約ではなく契約社員や有期契約が多くなっているのが現状です。健常者も障害をお持ちの方も、安定した生活を望むのであれば、無期契約の正社員が理想でしょう。

有期契約

有期契約というのは期間の定めのある雇用です。正社員であっても、例えば○○年の○月○日までの契約、それ以降、再度お互いに検討し契約を更新するかどうか決定します。定められた満了日で企業が更新契約など考えなければ、また就職先を探すことが必要です。ただ、パートやアルバイトではなく期間限定でも正社員としての雇用なので、その間の生活は安定します。

臨時・日雇い

忙しい時期、繁忙期などに臨時的に雇用するのが、臨時、日雇いです。都市部では日雇いや臨時など雇用も結構ありますが、田舎に行けばいくほど少なくなります。臨時や日雇いはサービス業や肉体労働など、職種が限られることも多いため、視覚障害者にとっては狭き門となるかもしれません。

契約社員

契約社員は雇用主と期間が決まっている労働契約を結んで、契約で定められた業務を行う雇用形態です。仕事内容や業務時間、給与などはそれぞれ働く企業によって異なります。契約期間については、半年や1年など、それぞれの契約によって違いがありますが、最長3年と決められています。(専門的な知識が必要な業種、定年後の再雇用は最長5年)

登録社員

登録社員は人材派遣で利用されることが多い雇用形態で、あらかじめ派遣会社に登録し、就業先が決まったら有期雇用契約を結ぶのが一般的です。派遣期間が終われば、雇用契約も終了となりますが、派遣先から再度派遣を求められることもあり、その場合も改めて雇用契約を結ぶこととなります。

嘱託

嘱託は有期労働契約雇用の一つで、明確な定義は存在しません。採用される企業の雇用条件によって待遇等かなり変わってきます。通常、定年退職後に再就職する場合、嘱託の契約が多いです。

出向

出向というのは、企業が社員との雇用契約を維持したまま、業務命令で子会社や関連会社に移動させ、就労させることをいいます。給与に関しては出向先企業が出向した本人に支給し、差額分を出向させた企業が補てんする直接支給と、出向元が本人に給与を支給し、出向先企業が出向元企業に給与相当額を支払う間接支給があります。

視覚障害者が選ぶ職種

今まで視覚障害者の雇用が少なかった職種に関しても、支援ソフトや環境状況を整えるなど広がりを見せています。企業が障害をお持ちの方々にも雇用を・・と積極的に動き出している現状の中、視覚障害者の方々はどのような職種を選んでいるのでしょうか。

サービス業

サービス業は様々な分野に広がっている職種で、人対人の業務もあれば、インターネットなどを介して行う業務など、非常に幅広い業務があります。視覚障害者の方々の就労状況アンケートを見ると、サービス業に従事されている方々は6.6%です。医療や福祉等の分野と比較すると少ない数字となっています。

情報通信業

視覚障害をお持ちの方に対応するパソコン、ソフトなどが発達したこともあり、情報通信業については興味をお持ちの方も多いのではないかと思います。コールセンターのオペレーターやプログラマーなど、幅広い業務があるのが魅力です。音声読み上げソフトなどもいいものが多くなっているので、これから先、雇用の広がりを見せそうな職種といえます。

医療・福祉

鍼、灸、マッサージなど、医療福祉系の仕事につく視覚障害者の方は多いです。視覚障害者の就業についてアンケートを見てみると、医療、福祉系は全体の30%近くとかなりの数の方が就業されています。高齢化が進む中、特に福祉系はさらに人材が必要となっていくことが予想されるため、視覚障害者の方々により興味を持ってほしい職種です。

卸売業小売業

卸売業や小売業などはこれまで、シフト制の勤務時間や休日勤務といった生活リズムを保つことが難しい状況にありました。しかし働き方改革により、長時間営業や労働の見直し、障害をお持ちの方にも働きやすい環境を作るところも多くなり、障害者雇用の数も増えている職種です。マニュアル化された作業や在庫管理など、視覚障害の方も従事できる仕事が少しずつ増えています。

参考サイト
https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/p8ocur00000088hr-att/vr25_essay09.pdf

視覚障害者が選ぶ仕事内容

現在、視覚障害をお持ちの方がどんな業種につかれているか、選ぶ仕事内容について紹介します。眼に障害を持っている方はあんまや鍼、灸などの医療系も多いのですが、最近は事務作業に従事する方も増加中です。あんま、鍼、灸、また事務系でもリモートでできる業務が増えていますし、翻訳作業などを選ぶ方もいます。

あんま、鍼、灸

元々古代中国で発達した漢方医学による物理療法があんま、鍼、灸です。仏教と共に日本に伝来し、現在日本の医療の中にあり、病気の治療や疲労回復などに役だっています。
自宅をあんま、鍼、灸の治療院として開業される方もいますし、治療院に務めている方もいます。最近は病気やケガの治療のほか、健康促進にあんま、鍼、灸を利用する施設もあり、就業先は広がりを見せています。治療を望む方の家に行って施術を施すこともあり、現代はあんま、鍼、灸の働き方も多岐にわたるといっていいでしょう。

事務作業

企業が障害者雇用に積極的な現代、視覚障害者の方にもより仕事の場所をひろげようと、企業内の環境整備、ソフトの導入など行われ、事務作業の雇用も多くなっています。
ICT技術が発達したことで、重度な視覚障害の方でもパソコン入力業務ができるようになりました。テキストデータをPCトーカーなど音声読み上げソフトを利用し、エクセルデータの入力、集計といった事務作業もできるようになっています。
画像や書類の処理などが必要な場合、盲状態では難しいと思いますが、ロービジョンの方であれば拡大鏡やルーペを利用して、少し時間がかかっても業務することは可能です。量が多い、納期が短いとなると負担が多くなりますが、周囲と協力し合いながら業務することは可能です。
障害の度合いによって周囲のサポートも必要となりますが、自宅で事務代行的な仕事も出てきていますので、視覚障害者の事務業務はこれから増えていくのではないかと思います。

翻訳作業

視覚障害があっても電話応対等は可能ですし、ソフトを利用してメールのやり取りを行ったり、盲状態でも点字ソフトを利用するなどして、翻訳作業を業務としている方もいます。語学力があれば、簡易翻訳業務に従事できるでしょう。

視覚障害者の雇用状況

厚生労働省の平成29年の障害者雇用の集計結果では、民間企業雇用の中で雇用されている身体障害者の数について、全体の7割弱という結果になっています。雇用率制度によって身体障害者については、他の障害をお持ちの方よりも雇用率が高くなっているのが現状です。
こちらの表は平成27年のハローワークにおける障害者への職業紹介状況です。
新規求職申込件数 有効求職者数 就職件数 就職率
身体障害者全体 63,403 91,939 28,003 44.2%
視覚障害者 5,081 7,109 2,283 44.9%
重度視覚障害者 2,963 4,154 1,378 46.5%
精神障害者 80,579 88,857 38,396 47.7%
知的障害者 33,410 41,803 19,958 59.7%

視覚障害者の就職状況

ハローワークの障害者への職業紹介状況を見てみると、視覚障害者、重度視覚障害者共に、他の障害者の方々と比較すると、求職申込件数がかなり少ないことがわかります。視覚障害者の新規求職申込件数は全体の8%くらいという数値です。眼に障害があるということで、就業に大きな壁があると感じます。

ただ、これまで多かった視覚障害者の就業先であるあんま、鍼、灸といった業務のほかに、最近はオフィスでの事務職が数字を伸ばしています。職業別就職件数において、あんま、鍼、灸は全体の5割を占めますが、事務職も14%近い数値となっているのです。民間企業が障害者雇用に力を入れはじめ、視覚障害者の方にも雇用を増やそうと職場環境を整えていることが要因となっているのでしょう。

重度視覚障害者の就職状況

視覚障害者で新規求職申込件数は全体の8%と低い数値ですが、重度視覚障害者への新規求職申込件数はさらに下がり5%弱です。視覚障害者については事務職が14%近い数値となっており、事務系の仕事も着実に領域が広がっています。しかし重度視覚障害者はの事務的職業は10%以下です。重度の視覚障害は眼が全く見えないのではオフィスワークは無理という固定観念がしつこく残っているのではないでしょうか。

まとめ

障害者雇用については雇用率の引き上げなどもあり、少しずつ雇用の幅、数共に増えています。しかし、障害の種類、度合いによって、就業先、仕事内容、雇用形態などに大きな隔たりがあることも分かってきました。
大企業だけではなく、中小企業も、仕事の相性や企業の環境整備などの問題がありますが、視覚障害者の方々の雇用にもしっかり目を向け、健常者と協力し合い、お互いの個性を仕事に活かせるような環境作りが望まれます。まずは視覚障害について、知識を持つことが重要です。

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